中世フランス歴史紀行(9):サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院教会天井画

サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ修道院教会Saint Savin sur Gartempe天井画

 

サヴァン(サヴィヌス)は5世紀中ごろの聖人で、この地に埋葬されました。9世紀にルイ敬虔帝の命で、彼を祀るために20名のベネディクト派の修道士たちが修道院を創建しましたが、878年、ノルマンに略奪され、廃墟と化してしまいました。

 

11世紀後半になってようやく再建されますが、その時に天井、壁、柱頭に装飾が施されます。百年戦争とユグノー戦争の間に何度も破壊と略奪が繰り返されますが、17世紀半ば、サン・モール修道会の管理下に置かれてから、ようやく修復が本格化しました。

 

 

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写真1:正面入口から身廊・内陣を見た全景

 

 

会堂の身廊は長さ42m、幅17mで、高さは16mを超えます(写真1)。その円天井にオークル(黄土)の赤、黄、青を顔料としてフレスコが描かれました。1080年から1100年の間のことと推定されています。画題は「創世記」や「出エジプト記」から(写真2)、また入口天井の画題は「黙示録」から選ばれています(写真3)。

 

 

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写真2:天井画の部分 バベルの塔のエピソード

 

 

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写真3:入口上部の壁画部分 第5天使が開いた深淵から軍馬が出現するエピソード

 

 

 

19世紀になって、このフレスコ画の価値を「再発見」したのは時の文化庁長官プロスペル・メリメです。彼は1836年から6度にわたって同会堂を訪問し、報告書をまとめ、フランス文化遺産指定に尽力しました。(パリから南へ300㎞、ガルタンプ川沿いに位置。)

 

参考文献:吉川逸治『ロマネスク美術を索めて』美術出版社、1979年

 

 

「歴史紀行 中世フランス編」は今回で最終回となります。いかがだったでしょうか。

いずれ別のテーマで「歴史紀行」をお届けしたいと思います。