-観光文化実践-
本学科の特徴でユニークな授業「観光文化実践」。学生が観光地や観光事業者を自ら訪ね、自分の目で確かめることで、教室での理論の学びを深めています。各教員がオリジナルの授業計画を立てていますが、今回は「江戸名所図会を使い新たな価値を見出す~ 観光文化実践Ⅵ~」をご紹介します。
この授業では、江戸時代、江戸の町に暮らした人々が、どういう場所を「名所」として認識していたのか、そしてその場所が現在どうなっているか、新たな観光の価値を見出せないかを「江戸名所図会」を使いながら考えています。
この江戸時代の名所案内、現在のガイドブックともいえる資料には、目白キャンパスの周辺も複数登場します。とくに雑司が谷の鬼子母神は現在でも参詣客が絶えない名所として有名です。
先日の授業ではキャンパスを抜け出し、旧目白不動尊の場所を確認しつつ、現在の目白不動尊(金乗院)まで行ってきました。ちなみに金乗院と寺の前の坂道(宿坂)も江戸名所図会には「宿坂関旧趾 金乗院 観音堂」として登場します。この図版は白黒なので、授業ではまず色鉛筆で色を塗ってみて、当時はどんな風景だったのかを再現してみました。
その結果、周辺は緑豊かな江戸の郊外だったこと、参道は季節になると美しい花(梅でしょうか?)が咲いていたこと、水路と橋の位置関係から観音堂と金乗院の間にはけっこう大きな池が存在していたことがわかりました。白黒映像をAIでカラー化して、当時の風俗・風景を鮮明にする技術を見る機会が増えてきましたが、色鉛筆のように原始的な方法もまだまだ有効なようです。
そして現地に赴き、現在の宿坂の傾斜や、金乗院の位置関係を確認してきました。残念ながら池の痕跡はわかりませんでした。現在の坂の傾斜は写真の通りですが、実際に歩いて上り下りしてみると、本当に絵のように体感するのも事実です。
次回以降、鬼子母神も訪問して同じような調査をする予定です。(担当:山下 琢巳)
授業で使用している図版は市古夏生・鈴木健一(校訂)『新訂江戸名所図会4』、筑摩書房、1996より