授業紹介:「国際コミュニケーション演習(4)」(翻訳入門)

「国際コミュニケーション演習(4)」は国際英語学科の2年次選択必修科目で、翻訳実習を中心とした演習を行いつつ、翻訳の理論も身につけることを目的としています。非常勤講師としてこの授業を担当している田中美保子先生は、翻訳理論の優れた研究者であるだけではなく、『月影の迷路』などイギリスのファンタジーの実務翻訳も手がけています。

田中先生の授業風景

昨年12月3日に授業を取材しました。もうすぐクリスマスという時期で、この日はまずクリスマスにまつわるものに関する文章を分担して和訳する課題が出ました。PDFで文章の一部を掲載しましたのでご覧下さい。たとえば “Holly and Ivy” では、丈夫な葉をもつHolly(ヒイラギ)が男性、しなやかなIvy(ツタ)が女性を象徴し、両者をからみ合わせたオーナメントが夫婦円満を意味するなど、日本人になじみのない文化について述べられているので、それをいかにわかりやすく訳すかが工夫のしどころです。(下にPDFへのリンクがあります。)

その後は翻訳理論の重要な概念である「等価」(equivalence)について学びました。「等価」とは「原文と訳文の価値を等しくすること」で、ある日本語の文を読んだ日本人が抱くのと同じイメージを、その英訳を読んだイギリス人が抱かないといけないということです。国によって文化も風土も違うのでこれはなかなかたいへんです。たとえば「腰」は英語ではwaistと訳すと思うかもしれませんが、「腰痛」はふつうbackache(背痛?)と訳します。日本語と英語の単語が示す身体の範囲は微妙にずれているので、それを意識するのが大切という説明がありました。

翻訳にとり組んで一番面白いのは、それを通して自分たちの文化があらためてよく見えてくることです。皆さんもぜひ体験してみて下さい。

(N. Hishida)
2021.12.04「国際コミュニケーション演習(4)」2.Deck the hallsプリント