公開講座「アートの文化学入門」を開催しました

12月7日(土)に公開講座「アートの文化学入門」を開催しました。
今回、文化人類学がご専門の山越英嗣先生(早稲田大学人間科学学術院)と考古学がご専門の石村智先生(東京文化財研究所)をお招きし、現在のアートについてご講演いただきました。​

山越先生「ストリートアートをめぐる自治と管理」

山越先生は横浜市桜木町高架下に描かれたグラフィティと呼ばれるストリートアートについて、その歴史やルールを丁寧に解説していただきました。

歩道の壁に描かれるグラフィティは法に抵触する恐れがありながらも、次々と描かれていく様子は、一見すると不法行為にしか見えません。しかし、公私入り混じった本来のストリートのあり方を示しているともいえ、管理社会の問題点に気づかされます。

石村先生「アーティストと考古学者は地域のために何ができるのか」

石村先生は、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県南相馬市浦尻貝塚でおこなったユニークなアート実践についてご講演いただきました。

地元の人びとと信頼関係を築きながら、アーティストと協同し、貝塚という場、さらに土地の歴史や記憶を呼び覚ます実践でした。そこで重要なのは「「場」と調和したアート」として作り上げることで、とくに「地霊(ゲニオス・ロキ)」という建築学や芸術学で使用される考え方を紹介いただきました。

アートの文化学入門
最後に本学科の伊藤先生を交えたディスカッション

文化人類学・考古学ともに人びとや場を重視してきたフィールドスタディです。
私たちの生活空間に広がるアートを科学すること。
その面白さが本講座で示されたのではないかと思います。

=======アンケートより========

  • 美術館で観るようなアートとは少しちがう芸術について話を聴くことができて良かった。(学生・一般参加者)
  • アート×地域×社会との結びつき、関わるバランスについて考えさせられた。(学生・一般参加者)
  • 表現者、アーティストとしての表現と公共性、ルールなどのぶつかりあいは難しい問題だと思いました。(学生・一般参加者)
  • 犯罪は良くないけれど表現を阻害するのも良くない。それぞれの表現者が思い描く「Art」の差も面白く、複雑だなと思います。(学生)
  • 行政によるアートマネジメントの限界、多くの人に享受されるための表現の制約などまだまだ課題が多い分野の話をディスカッションを通して、さらに深く考えることができ、理解することができた。とても濃い時間でした。(学生)