教員新刊紹介・授業案内「西洋古代・中世史」

金尾健美先生の著書、『15世紀ブルゴーニュの財政―財政基盤・通貨政策・管理機構―』が今年度刊行されました。以下、先生にその内容について語っていただきました。

 本書は中世フランスの大貴族ヴァロワ家ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボン(位1419-67)の財政を扱ったものです。確かに一般向けとは言えませんが、パラパラとページを繰って、こういうテーマもありか、と思っていただければ十分です。

 ブルゴーニュ公は広大な領土を支配していました。農民は小麦やブドウ酒、鶏や羊、さらには貨幣と、たくさんの地代を納めました。戦争があれば、臨時税も徴収されます。そうした現実を30年分ほど調べてまとめました。

 ブルゴーニュ公は貨幣を製造することができました。もちろん好き勝手とはいかず、ルールはありましたが、それでも貨幣を発行するのはすごいことです。金貨や銀貨をどうやって作るか想像できますか。本書では貨幣の製造方法や規格化、品位の変更と政策についても詳しく説明しました。

 さて、そうすると、地代徴収や課税、造幣には専門的知識を持ったスタッフがいそうな気がしませんか。その通り。ブルゴーニュ公をアシストしたプロ集団についても丁寧に説明しました。如何でしょう。随分と分厚い本になってしまいましたが、本書の内容を理解して頂けたでしょうか。えっ、面白いかって。うーん、それは読む人が決めることです。

金尾健美『15世紀ブルゴーニュの財政―財政基盤・通貨政策・管理機構―』知泉書館2017年、542頁。

http://www.chisen.co.jp/book/b308299.html

 

15世紀に完成した『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』より、中世フランスの農村風景(9月)です。ぶどう狩りの様子が描かれています。このような風景のなかで行われていたことを、金尾先生は分析されているのですね。

金尾先生の授業は「西洋古代・中世史」などで受講することができます。 by A.T.