【授業紹介】スポーツ・健康心理学 「ストレスと友達になる方法」(TED)

今年度から新たに開講されている「スポーツ・健康心理学」では、オリンピックに出るようなアスリートばかりではなく、私たち一般の人々が運動や日常の行動をつうじて健康な生活を送るための方法が取り上げられています。ここでは、授業の中で取り上げられたTEDの講演を紹介しましょう。

 

sinri_news20160926-01 健康心理学者ケリー・マクゴニガルは、ストレスに対する考え方を変えることで私たちが健康な生活を送ることができると主張しています。これまで「ストレスは健康に害を与える」と考えられてきました。これに対して、約3万人のアメリカ人を8年間追跡調査した最近の研究(Keller, Litzelman, Disk, et al. 2012)は、それは「ストレスが健康に害を与えると信じる」からであることを示唆しています。調査の結果では、強いストレスを実際に経験した人は、そうでない人よりも43%死亡率が高かったのですが、これは「ストレスが健康に害を与える」と信じていた人についてのみ当てはまりました。「ストレスが健康に害を与える」と信じていなかった人の死亡率は、ストレスを経験しなかった人と変わらなかったのです。 さらにマクゴニガルは、ストレスを肯定的に捉えることによる身体的な効果を示しながら、これまで重視されていなかった脳の機能をふまえて、ストレスの影響を軽減する具体的な方法を提案しています。それは、他人と思いやりを持って関わることでストレスからの回復が促進されるというものです。実際、約1,000人のアメリカ人を対象としたもう一つの研究の結果では、強いストレスを経験した人たちの死亡率は30%増加しましたが、他人を思いやることに時間を費やした人は、ストレスによる死亡率が増加しませんでした(Poulin, Brown, Dilard & Smith 2013)。ストレスからの悪い影響は、避けられないものではないと言えるでしょう。

shinri_news20160926-03

TED  ケリー・マクゴニガル「ストレスと友達になる方法」