【心理学への招待】テレビ・コマーシャルの中の性役割のステレオタイプ

心理学では、テレビやインターネット、SNSのようなメディアの心理的な影響が研究されてきました。

ここでは、テレビ・コマーシャルにおける男女の性役割(ジェンダー)の表現を分析した研究を紹介しましょう。

 マンステッドとマカラック(1981)がイギリスのテレビ・コマーシャルに登場する人物の役割を分析したところ、男性は女性よりも自律的な役割(専門家、労働者、有名人など)で登場することが多く、女性は従属的な役割(配偶者、親、主婦など)で登場し、特に母親としてしばしば表現されていました。このような傾向はアメリカ合衆国での研究(マッカーサーとレスコー,1975)とも一致しており、女性が労働力に占める割合は37%(1969年)にもかかわらず、職業場面の中心的な人物として登場する割合は11%でした。

 テレビ・コマーシャルは、社会に流布している文化をある程度は反映していると考えられます。同時に、テレビが世の中の価値観や考え方に影響を与えることもあるでしょう。テレビ・コマーシャルは効果的にあるために、より典型的と思われる状況を表現する必要があります。そのために、事実とは必ずしも一致しないステレオタイプが利用されることがあるのです。テレビ・コマーシャルに表現された性役割のステレオタイプが、世の中の考え方や子どもたちの心の発達に影響を与えているかもしれません。

 このようなメディアの影響についての心理学の研究は、主として社会心理学の分野で行われていますが、認知心理学や発達・教育心理学でも取り上げられています。本学の心理学科では、桂准教授がメディアの影響を研究テーマとしていますので、最近の研究を学ぶことができます。

参考

英国のテレビ広告における性役割のステレオタイプ化 

マンステッド、マカラック(1981)

British Journal of Social Psychology, 20, pp.171-180.

Key Studies in Psychology, R. Gross ( 鵜沼秀行 訳 キースタディーズ心理学 大山正、岡本栄一監訳)から