書籍紹介:帆刈浩之『越境する身体の社会史』

史学科の元教員の帆刈浩之先生が『越境する身体の社会史:華僑ネットワークにおける慈善と医療』(風響社、2015年)を出版されました。

 

本書は、西欧の政治的進出と西洋文化の流入に直面した19世紀中国において、一般の人々がどのように対処したのか、また社会はどのように変化していったのか、「医療」という行為に注目して追跡したものです。

 

医者や病院というものは、地域社会の中、人々のつながりの中で営まれるものです。 その地域社会から断絶して存在することはあり得ません。だから社会が変われば医療のあり方も変わっていきます。逆に言えば、医療の歴史を追いかければ、社会の変化が見えてくるのです。

 

本書が扱うのは、19世紀後半の香港。中国に西洋文化が入ってくる最先端であり、かつ多くの中国人移民を世界中に送り出した、いわば「世界への窓口」です。その一方で、中国には「漢方」のもととなった伝統医学が確立しており、また悠久の歴史に裏打ちされた伝統的社会も強固に存在していました。そこに、近代化された西洋の文化とシステムが急激に入ってきたら

 

上述した「医療の変化と社会の変化」を観察するには、うってつけの舞台と言えるでしょう。

 

 

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帆刈先生は、今年度「医療史」の授業を担当されます。集中講義として行われるこの授業では、この本のエッセンスを含めた医療の歴史を分かりやすくお話してくれるはずです。

 

この書籍は学生研究室にあります。帆刈先生の講義をきっかけに、近代中国の医療史をさらに調べたいと思ったら手に取ってみてはいかがでしょうか。