【えいごコラム号外20】 本とペンを手に

 

えいごコラムExtra

 

「本とペンを手に」

 

パキスタンの少女マララ・ユサフザイ(Malala Yousafzai )さんは、パキスタン・タリバーン運動(TTP)の支配下にある地域で、TTPによる女子校の破壊活動を告発し、女性教育の必要性をうったえる運動を続けてきました。2012年10月、彼女はTTPのメンバーに襲撃され、頭部と首に銃弾を受けました。

 

奇跡的に回復したマララさんは、彼女の16歳の誕生日でもある今年の7月12日、ニューヨークの国連本部でスピーチを行いました。国連は7月12日を「マララ・デー」としています。

 

『ガーディアン』紙に彼女のスピーチを起こしたものが載っていました。ごく一部ですがここで読んでみましょう。引用した箇所には拙訳をつけてあります。

 

TTPに襲われて自分と友人が負傷したときのことについて、彼女は次のように語っています。

 

They thought that the bullets would silence us, but they failed. And out of that silence came thousands of voices. The terrorists thought they would change my aims and stop my ambitions. But nothing changed in my life except this: weakness, fear and hopelessness died. Strength, power and courage was born.

(彼らは銃弾で私たちを沈黙させられると思いました。でもそうはいきませんでした。そしてその沈黙から無数の声が上がったのです。テロリストは私の目標を変え、私の願いをくじくことができると思っていました。しかし私の人生で変わったことはこれだけです。弱気、恐怖、絶望は消えました。意志、力、そして勇気が生まれました。)

 

最初の文の “silence” は「~を沈黙させる」という意味の動詞です。次の And で始まる文は「倒置」で、主語は “thousands of voices” です。テロリストによる暴力はマララさんたちを黙らせるどころか、世界的な関心がこの問題に集まるきっかけとなったわけです。

 

彼女は、しかし、自分を襲撃したタリバーンを恨むことはない、と述べます。

 

I am here to speak for the right of education for every child. I want education for the sons and daughters of the Taliban and all the terrorists and extremists. I do not even hate the Talib who shot me. Even if there was a gun in my hand and he was standing in front of me, I would not shoot him.

(私がここにいるのは、すべての子どもに教育を受ける権利があることをうったえるためです。私は、タリバーンの、そしてあらゆるテロリストと過激派の息子や娘たちが教育を受けることを望んでいます。私を撃ったタリブ本人さえ憎んではいません。私の手に銃があって、彼が目の前に立っていたとしても、私は彼を撃たないでしょう。)

 

“speak for ~” は、「~に賛成意見を述べる」、あるいは「~を求めて声を上げる」ということです。 “Talib” はタリバーンの個々のメンバーを表す語です。 “Even if. . .” の文は「仮定法過去」で、「仮に~としても」ということを表しています。たった一人の少女に銃を持ち出さなければ立ち向かうことができなかった男たちと、深く傷つきながらも彼らを許そうとする少女。この「差」を生み出したものはいったい何なのでしょうか。

 

それが「教育」の持つ力なのでしょう。テロリストたちが恐れているのは教育そのものだ、とマララさんはうったえます。

 

That is why they are blasting schools every day because they were and they are afraid of change and equality that we will bring to our society. And I remember that there was a boy in our school who was asked by a journalist why are the Taliban against education? He answered very simply by pointing to his book, he said, “a Talib doesn’t know what is written inside this book.”

(彼らが日々学校を爆破し続けるのは、私たちが社会にもたらすであろう変革と平等を怖れていたから、今も怖れているからです。そして私は、私たちの学校の男の子が「なぜタリバーンは教育に反対なのだと思うか」と記者から問われたときのことを覚えています。彼は自分の本を指さしてとてもシンプルな答えを返しました。「それは、タリブがこの本に何て書いてあるか知らないからだよ。」)

 

そして彼女は、次のように述べてスピーチを締めくくっています。

 

. . . let us pick up our books and our pens, they are the most powerful weapons.

(私たちの本とペンを手に取りましょう。それらこそ最も強力な武器なのです。)

 

皆さんも「本とペン」をけっして手放さないでください。自ら学び、考え、自分の意見を構築し、人に伝える力・・・それが「強力な武器」になる日が必ずやってきます。大学の講義やゼミを通してその力を磨いていってください。

(N. Hishida)

 

【引用文献】

Yousafzai, Malala. “Our books and our pens are the most powerful weapons.” The Guardian 12 July 2013.

※急いで掲載したためか、あるいは本人の言い間違いか、ところどころ文法的に適切でない点があるようです。今回はあえてそのまま引用しました。